2014/05/16

町の開業医にとってコピペやパクリは重要

世界最先端の研究論文にコピペがあったとケンケンガクガク、ネット、TVが賑やかになりました。

最先端の研究事情を知らない私にとって、世の中、コピペ、パクリは常識ですね。コピペ、パクリを繰り返して、世界中の国々が発展、進歩?してきたし、これからもそうだと思います。

芸術の分野でも、政治経済、あらゆる分野で、原始時代から人類が生きながらえて、これまで繁栄したのは、このコピペ、パクリで素早く変化できるからでしょう。

動物や植物も変化しますが、何万年で変わるというスピードです。ですから、明治生まれのおじいちゃんの頃はカラスは地面を這っていたけど、最近空を飛べるようになった、なんてことはないのです。

私自身が身を置く小児医療において、まったく新しい治療法、宝樹先生独自の画期的な治療法Xは、むしろ危険であり、悪い結果をもたらす詐欺かもしれない。だって、相手の人は100人いれば100人それぞれに体質が違う(ここでいう体質は遺伝的素因)。

そこで、新しい、画期的な、あるいはこれまであまり知られてない治療法Xを実践するには、
第一段階:まず少人数で試してみて、大問題がないか調べる。
第二段階:より多くの人に試してみて、大問題がないか?これまでの方法Aと比べて明らかに効果があるのか?を調べる。
第三段階:広く広報して、更に多くの人に用いて、問題がないか継続的に調査する。

という団塊を踏むわけです。

画期的な治療方法や、他の先生がやってない、貴方だけに秘密の治療法教えます!なんてのは神の技か詐欺です。で、神の技なんてそんなに転がっていないので、ほとんど詐欺です。

分かりやすい例をあげますね。

私は平成3年に開業するまで、大学病院に勤務し、主に新生児診療をしてました。緊急のハイリスクお産があると聞けば、分娩室、手術室にも出入りする生活でした。

で、その勤務医時代。まだ卒後2~3年のペーペー。冬の土曜日。午後というのにグダグダと小児病棟にいたら、ベルギー人医師が見学にきたので、案内してくれ、と上司から言われました。英語苦手は小生。

冬、病棟にベルギー人の医師(WHO所属)が。私中学英語で応対。乳児室。嘔吐下痢点滴中の赤ちゃん大勢入院。元気に泣いて賑やかな部屋。

Dr.「この子らは飲めないのか?」
私「いえ、飲める」
Dr.「なぜ点滴?飲めるなら点滴無用」
私「えっ、吐きますが?」
Dr.「点滴を飲ませればいい」
私「飲ませると下痢がひどくならない?」
Dr.「1日の維持に出る分を足して飲ませればいい」
私「その計算で点滴してる」
Dr「なぜ口からでなく、点滴する?」
私「...」
Dr.「Nelsonのテキストはあるか?」
私医局から持っていく。
Dr.「Pathophysiology of Body Fluids and Fluids Therapy 読んだか?」
私「卒後、指導医にこれを読め、分からないことがあれば質問するように、言われて読んだけど、、」(読んでも実践しなければ読んでないのとおなじことだ)
Dr.「飲めるなら、計算して点滴するものを飲ませなさい」
私「それはどこに書いてある?」
Dr.「バングラディッシュなどのコレラ治療に使ってる。さっきの子どもはコレラじゃないが、起きてることは同じ。君は自分の子どもが点滴でも、自宅で飲ませても同じと知って点滴したいか?」
私「...」
Dr.がその後、英語のよく分からない私に確か2時間以上もかけて説明。

Dr.にこっと笑って、ランチを終えて、、帰っていった。そこで、ペーペーの小生、しかし週に午前2回の自分の外来で診察した嘔吐下痢の子は、原則入院させずに、あらかじめ作った処方を家族に作らせて飲ませることにした。当時携帯電話もない時代で、午前見て、指導して、午後再診(受付通さなかったので、病院の収入にはならず。私の貴重な経験となる)。私の指示する入院が減った。処方内容も、ソリタ-T顆粒2号主体に。

感染性胃腸炎(嘔吐下痢症、ロタ、アデノ、ノロウィルスが多い)。発熱、嘔吐、下痢の組み合わせ。典型例は突然の嘔吐(数時間~1日くらい)、あい前後して水様下痢(米のとぎ汁のようなものあり->昔、仮性コレラと)。体から水と電解質(塩分)がでてくので、補う。出る=飲むの帳尻合せ。

吐いても飲める、飲む意欲があるなら、口に点滴するイメージで飲む。何を?ポカリスエットでは塩分が薄すぎる。WHOが勧めるORS(Oral Rehydration Solution)は発展途上国の下痢嘔吐脱水による死亡を減らす目的で作られたが、コレラだけに効果があるという訳じゃない。

ソリタ-T顆粒2号(1包4gを白湯100mlに溶く)。電解質(mEq/L)はNa=60,K=20,Mg=3,Cl=50,PO4=10mmol/L,クエン酸=34mEq/L、13Kcal。脱水程度が軽~中等症(強い抹消循環不全がない)に、ORS飲ませる。

嘔吐下痢でORS、O製薬OS-1?、しかし安く、自宅で母親が作れるもの。食塩小スプーン1匙4g+100%リンゴ果汁200mlに白湯加えて1Lにしたもの、メモ渡す。味噌汁+重湯+梅干もNa、炭水化物、クエン酸を含み良い。昔のおばあちゃんの知恵は素晴らしかった。水分と言うだけじゃダメ

吐いても飲める、飲む意欲があるなら、口に点滴するイメージで飲む。何を?スポーツドリンクでは塩分薄すぎる。WHOが勧めるORS(Oral Rehydration Solution)は発展途上国の下痢嘔吐脱水による死亡を減らす目的で作られた。

WHOのORS詳細はこちらから読めます。

うちにみえる嘔吐下痢にはORSでほとんど点滴無用。さらにロタウィルスワクチンの効果で患者さんそのものが減ったし。

というわけで、古い医者が全て遅れてるとは言わないが、こんな、今ではあたり前のことも、ちょっと前にはベルギーと日本ではこんなに差があったのだ。

私が卒業した73年には、嘔吐下痢なら、まず入院して経口摂取禁止して点滴、その6~12時間後から少量の2倍希釈乳を飲ませて嘔吐なしを確かめて、ゆっくり増量して、体重相当の摂取を確かめて離乳食~幼児食を食べて退院。きっと私が卒業した頃の日本の赤ちゃんの嘔吐下痢は重症が多かったのだろう、とか、、。

でもね、そのほんの2~3年後には私自身がORS効果を実感できたので、、ただ単純に医療情報が末端の研修医、さらに大先輩にも届いていなかった、あるいは嘔吐下痢の治療に関心がなかったと想像します。多分、いまになって思えば嘔吐下痢の治療に関心がなかったのでしょう。

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