2018/05/03

MRワクチン注射四方山話

三月から麻疹(はしか)が流行ってる。

沖縄県に始まりその後各地に広がった。

テレビ、新聞では沖縄ほど報道されないが、東京都でも麻疹はみられる。

ぜひ、地元の状況を保健所やいつもの医師に尋ねて対応してください。

私が医者になった73年にはまだ麻疹ワクチンはなかった。小児科医の私は麻疹を多く診察して、特効薬のない麻疹の治療効果もなく、失った赤ちゃんがいた。

当時は、麻疹は赤ちゃん子どもの病気だった。

大人は麻しんを生き延びた生き残りなのだ。だから、大人の麻疹は珍しくて、発熱、発疹の大人は抗菌薬を飲んで発疹がでると薬疹ではないか?と言われることもあった。

ある時、病院の皮膚科から診療依頼があって皮膚科病棟に赴き、診察した。

毎日子供を見てる僕には最初に麻疹が浮かんだ、カルテになかったので、本人にベッドサイドで聞いたら、娘さんがちょっと前に麻疹と診断されていた。検査結果も麻疹で矛盾しないので、麻疹が最も考えられるというような返事を書いた。そのやりとりを同室の大人が聞いて、大人のはしか!と、大笑いになった。

そう、最初大部屋に入っていたのだ。いまなら、そもそも大人でも麻疹を疑うから大部屋には入らないと思う。

人類の脅威である感染症のひとつ麻疹感染予防のための予防接種開発が進み、78年10月から定期接種になり麻しん患者は減少した。

しかし、接種率は60~70%でなかなか95%に届かず、感受性者(ワクチン未接種、麻疹に罹ったことがない)が毎年蓄積し、数年ごとに大きな流行があった。

麻しんワクチンの1回で継続する流行は収まるものの、数年ごとの流行が収まらない。

ワクチン1回で接種率が低いと毎年感受性者が蓄積する、しかし、自然感染も減るので、ワクチン後の抗体維持期間が短くなる。

そこで、2006年4月から麻疹ワクチンと風疹ワクチンを1歳と小学校入学前1年間の2回定期接種を導入した。

さらに08年から5年間、麻しんワクチン1回の接種であった新たに中学1年と高校3年になる児に対して麻疹ワクチンを接種を開始した。

さらに麻疹の早期診断を可能にする検査体制の充実などもあり、15年3月に日本はWHOより麻疹撲滅国として認定されました。

しかし、海外からの麻疹の流入により散発的に小流行は起こりました。

世界ではまだまだ麻疹流行の国は多く、地球上どこからも極めて短時間で日本に到達できるので、麻疹の潜伏期間(感染してから発病するまで)に入国して日本国内で発病することは避けられません。

ですから、日本で麻疹が消えたことが麻疹ワクチンが不要ということでなく、従来通りしっかりワクチンを受けることが大事です。

ちょうど、春休みの沖縄県で麻疹がでたというニュースは一気に広がり、さっそくワクチン希望の問い合わせがきた。多くは定期接種を忘れてた、あるいはワクチン接種の記憶がない、記録がない大人だ。

昨年、一時的にMRワクチンの流通が悪い時期があったものの、ようやく回復したところだったので、診療所も余裕をもって接種している。

大人にMRワクチンすると皆さん
「もう注射終わったんですか?早いですね、痛くないんですね!」
「注射の針も細いし、なによりワクチン液の刺激が強くないので、1歳の赤ちゃんでもMRワクチンは滅多に泣きませんよ(笑)」

高齢私のような医者は昔散々集団接種したので、例えば中学校なんか、生徒数千数百人とか。体育館でまるで甲子園の入場行進のようにクラス別に数列で進んできて、待ち構える医者は次々と注射する。ゆっくりできないし、ゆっくり0.5ml注射するのは難しくてできない。

私と目があって突然泣くことあるけど(^^)

そんなわけで、たぶん暫くするとまた喉元過ぎれば熱さ忘れるでしょうが、ぜひ1歳と年長さんの定期接種はもちろんのこと、小学生以上でも麻疹ワクチン2回接種の記録(記憶でなく)のない方はワクチンを受けてください。

今回の流行でうれしいこともありました。それは、中学生自身が関心を強くもち、母親と一緒に接種にきたことです。なぜ小さいときにワクチンやらなかったのか!と親を責めても意味がない。

それより今後のことを中学生本人に説明して接種スケジュール表に赤字でコメント書いて手渡した。きっと受けた回数の少ないポリオ、DPT、受けてないB型肝炎、水痘、おたふくかぜ(これはNHK朝ドラで知ったおたふくかぜの難聴のこと)、日本脳炎ワクチンを受けてくれるだろう。

災い転じて福となす

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宝樹真理<shinri.takaragi@gmail.com>
たからぎ医院
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